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東京地方裁判所 昭和57年(特わ)4000号 判決

本店所在地

東京都世田谷区千歳台一丁目二〇番二二号

ウエダ産商株式会社

(右代表者代表取締役植田正吉)

本籍

東京都世田谷区千歳台一丁目二〇番

住居

東京都世田谷区千歳台一丁目二〇番二二号

会社役員

植田正吉こと鄭正吉

昭和一六年二月二五日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官江川功出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人ウエダ産商株式会社を罰金三一〇〇万円に、

被告人植田正吉を懲役一年六月に

それぞれ処する。

被告人植田正吉に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人ウエダ産商株式会社(以下「被告会社」という。)は、東京都世田谷区千歳台一丁目二〇番二二号(昭和五五年一一月九日以前は東京都渋谷区道玄坂一丁目一五番三号)に本店を置き、金融業等を目的とする資本金五〇〇万円の株式会社であり、被告人植田正吉は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人植田正吉は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、収入利息の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五三年一〇月一日から昭和五四年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億四六七七万五六二六円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、昭和五四年一一月三〇日、東京都渋谷区宇田川町一番三号所在の所轄渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九七九万八七七一円でこれに対する法人税額が三〇五万三六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五八年押第二三六号の2)を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額五七八四万四四〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)と右申告税額との差額五四七九万〇八〇〇円を免れ

第二  昭和五五年一〇月一日から昭和五六年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億七三五九万五〇一二円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、昭和五六年一一月三〇日、東京都世田谷区松原六丁目一三番一〇号所在の所轄北沢税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が零円で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の2)を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額七一五四万一〇〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人植田正吉の当公判廷における供述

一  被告人植田正吉の検察官に対する供述調書

一  収税官吏の被告人植田正吉に対する質問てん末書二通

一  金原信昌こと姜信昌、村上勝一こと除俊及び望月文吾の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏の清水勝(二通)、古庄一夫(二通)及び植田春子こと宗春子に対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の収入利息、受入手数料、役員報酬、給料手当、給料、賞与金、役員賞与、損金不算入額、福利厚生費、修善費、旅費交通費、通信費、接待交際費、交際費損金不算入額、租税公課、手数料、雑費、受取利息、雑収入、支払利息、貸倒損失、雑損失及び青色欠損金控除に関する各調査書各一通

一  北沢税務署長作成の証明書

一  東京法務局世田谷出張所登記官作成の登記簿謄本、閉鎖した目的欄及び役員欄の用紙の各謄本

一  東京法務局渋谷出張所登記官作成の閉鎖登記簿謄本

一  押収してある法人税確定申告書二袋(昭和五八年押第二三六号の1及び2)

(法令の適用)

被告人植田正吉の判示第一の所為は、行為時においては昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては右改正後の法人税法一五九条一項に該当するが、犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、同第二の所為は、法人税法一五九条一項に該当するところ、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により、重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、その刑期の範囲内で同被告人を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

更に、被告人植田正吉の判示各所為は、被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、判示第一の罪につき、右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により、右改正前の法人税法一五九条一項の罰金刑に処せられ、同第二の罪につき、法人税法一六四条一項により、同法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、いずれも情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により、各罪所定の罰金を合算し、その金額の範囲内で被告会社を罰金三一〇〇万円に処することとする。

(量刑の事情)

本件は、判示のとおり、被告人植田正吉が被告会社の業務に関し、昭和五四年九月期及び昭和五六年九月期の二事業年度において、合計三億一〇五〇万円余の所得を秘匿し、合計一億二六三〇万円余の法人税を免れた事案である。この二度の確定申告のうち、一回は実際の所得金額の六パーセント程度の金額しか申告をせず、残る一回も零申告を行ったものであり、その犯行の手段、方法においても、金主元や貸付先と通謀して裏で借入れた金を裏で貸付け、それによって得た収入利息を除外し、簿外の貸付金が不良債権になると、既に回収済みの分も含めて新規貸付したように操作してこれを公表にまわしたうえで貸倒損失を計上するなどしている。更に、これらの事を適格に行うため二重帳簿を作成するなどしており、計画的、巧妙であって、甚だ芳しくなく、その刑責は軽視できない。

しかしながら、被告人植田正吉は本件犯行を反省して捜査にも協力し、今後は二度とかかる不祥事を起こさない旨陳述している。本件については修正申告を行い、本税は既に納付済みであり、これに連動する諸税の納付についても努力していることが窺われること、また、本件対象期外ではあるが、被告会社は多額の不良債権を抱えるに至っていること、被告人植田正吉には、昭和四五年に暴力行為等処罰に関する法律違反罪で罰金に処せられたほかに前科のないこと、その他被告人の経歴等諸般の事情を考慮して主文のとおり量刑する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 原田卓)

別紙(一)

修正損益計算書

ウエダ産商株式会社

自 昭和53年10月1日

至 昭和54年9月30日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙(二)

修正損益計算書

ウエダ産商株式会社

自 昭和55年10月1日

至 昭和56年9月30日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙(三)

税額計算書

ウエダ産商株式会社

〈省略〉

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